荒木肛門科(旧荒木産婦人科肛門科) 大阪府堺市堺区
肛門外科・肛門内科・外科・消化器内科・腹部超音波検査・大腸内視鏡検査

健康保険取扱い TEL:072-223-7959
肛門周囲膿瘍、痔瘻、痔核のことなら荒木肛門科。

SERVICE

肛門の病気と治療法

様々な肛門疾患の種類とそれらの治療法について説明します。
保存的治療(内科的治療)を基本としますが、手術した方がよい場合もあります。特に、肛門周囲膿瘍と痔瘻は手術しないと治りません。
保存的治療は、軟膏などを毎日根気よく使って、便秘などの排便習慣、生活習慣を改善することです。治療効果が出るには、数週間はかかります。肛門科のドクターショッピングはやめましょう。
解説した治療法の中には当院ではできない治療法もあります。(当院は入院はできませんので、入院や全身麻酔が必要な治療はできません。各病気の最後に当院でできる治療、できない治療を書きました)

1|肛門周囲膿瘍

肛門縁から2cm奥に歯状線があり、歯状線は肛門乳頭という突出部と肛門小窩(肛門陰窩)というくぼみの交互の繰り返しでできています。肛門小窩は全周性に約20個あり、肛門小窩は内外肛門括約筋間にある肛門腺という粘液を分泌する腺につながっています。便中の細菌が肛門小窩から肛門腺に入り、肛門腺に感染を起こします(筋間膿瘍)。筋間膿瘍は外肛門括約筋の外に広がり、肛門周囲の皮下に膿瘍を作ります。これを肛門周囲膿瘍と言います。

(症状)肛門周囲膿瘍は肛門の痛みを認め、肛門周囲の皮膚が赤くなり、熱感をもち、腫れます。発熱も認めます。肛門指診をすれば、ほぼ診断がつきますが、高位筋間膿瘍など、わかりにくい時は超音波検査を行います。
(治療)肛門周囲膿瘍は抗生物質だけでは治らず、局所麻酔をして、切開排膿が必要です。当院では患者さんの同意の下、受診した当日に切開排膿ができます。切開した傷がすぐに閉じないように、ドレーンというチューブを入れたり、drainage seton法といってゴム輪を挿入します。約半数の人は治癒しますが、残りの半数の人は痔瘻に移行します。
(当院で治療できます)


2|痔瘻(あな痔)

男性に多い傾向があります。肛門周囲膿瘍が自然に破れたり、切開排膿により、肛門管内の肛門小窩(原発口)から肛門周囲の膿の出口(二次口)まで肛門管とは別の膿の通り道(トンネル)ができます。膿の通り道が閉鎖されず、固まって残ったものが痔瘻です。痔瘻が完成すると、手術しなければ治りません。痔瘻の分類は日本では「隅越分類」がよく用いられます。隅越Ⅰ型は皮下痔瘻で、裂肛随伴性痔瘻などが該当します。隅越Ⅱ型は筋間痔瘻で、最もよく見られる低位筋間痔瘻(ⅡL型)と、高位筋間痔瘻(ⅡH型)があります。坐骨直腸窩痔瘻(Ⅲ型)と骨盤直腸窩痔瘻(Ⅳ型)は原発口は後方にあり、後方の内外肛門括約筋間や破壊された外肛門括約筋内(後方深部隙)に原発巣膿瘍を形成します。Ⅲ型、Ⅳ型痔瘻を長期間放置した場合、痔瘻癌が発生することもあります。クローン病が原因となる特殊な痔瘻もあります。

(症状)肛門近くの膿の出口(二次口)から排膿を認めます。血液がにじむこともあります。痔瘻そのものは自然治癒しませんが、二次口が閉じたり、腫れて膿みが出たりを繰り返します。複数の二次口を認める場合もあります。Ⅲ型、Ⅳ型痔瘻は後方に原発巣膿瘍を形成するので、肛門指診で、後方の深外肛門括約筋が硬く触れます。
(治療)痔瘻の治療は手術です。手術には大きくわけて、開放手術(lay open)、シートン(seton)法、括約筋温存手術(coring out)があります。痔瘻の根治性と肛門の機能温存の両立が求められます。後方の低位筋間痔瘻(ⅡLS型)の手術は開放手術が一般によく行なわれます。前方側方のⅡ型痔瘻に開放手術を行なうと、術後便失禁を来たすおそれがあるので、seton手術を行ないます。seton手術とは痔瘻の瘻管の内腔から肛門管内の原発口にゴムひもを入れて、結紮する方法で、ゴム輪は徐々に体外に押し出され、痔瘻も一緒に押し出されて、痔瘻を治す方法です。
当院では治癒までの期間が短く、再発の少ないminimal seton手術を全方向のⅡ型痔瘻に行っています。
痔瘻の治療においては痔瘻のタイプ(隅越分類)が重要です。すなわち、I型、II型の痔瘻に関しては、当院のような開業医で手術を受けていただいても、きちんと治癒します。Ⅲ型、Ⅳ型痔瘻のような複雑痔瘻、深部痔瘻はMRIなどによる詳細な診断が必要であるため、MRI検査と入院のできる肛門専門施設(洛和会音羽病院など)に紹介しています。痔瘻のタイプに応じた適切な治療方針を提案するようにしています。
(I型、II型、II型深めの痔瘻は当院で治療できます)


3|痔核(いぼ痔)

痔核は肛門上皮(粘膜)と肛門括約筋とのあいだの肛門クッションが肥大したもの(静脈瘤など)です。元々誰でもあるものが、肛門に負担が加わった結果、膨らんだものなので、痔核があるからといってすべて取り除く必要はありません。肛門縁から約2cm奥に歯状線という皮膚と粘膜の境界線があります。歯状線よりも上(口側)にできる痔核が内痔核、歯状線よりも下にできる痔核が外痔核です。歯状線よりも上の粘膜は痛みの神経がありませんから、内痔核は痛みがなく、外痔核は痛みを感じます。

[症状]主な症状は肛門からの出血で、内痔核が大きくなると排便に脱出(脱肛)するようになります。外痔核は腫脹します。内痔核の脱出がひどくなり、腫れて戻らなくなったのが、嵌頓(かんとん)痔核で、痛みも伴います。内痔核の症状を表すのによく用いられるのがGoligher(ゴリガー)分類です。1度は出血のみ。2度は排便時の脱出があるが、自然に戻る。3度は用手的還納が必要。4度は嵌頓痔核です。 [治療](保存的治療)脱出を伴わない内痔核や軽度の外痔核は保存的治療すなわち、薬による治療を行ないます。軟膏や坐薬を1日2回程度根気よく使用します。便秘は痔核の原因となるので、下剤も併用します。長時間トイレでいきむのはよくないです。アルコールやトウガラシ類を控えます。嵌頓痔核もまずは保存的加療で腫れが改善してから、根治手術を行います。
(手術治療)簡易的な手術(内痔核ゴム輪結紮術、内痔核硬化療法)と、本格的な手術(痔核結紮切除術LE:ligation&excision)があります。
ゴム輪結紮術や硬化療法は原則として内痔核のみの適応ですが、局所麻酔でできるのがメリットです。ゴム輪結紮術とは、内痔核の根元を専用の小さな輪ゴムでしばる方法です。しばった内痔核は数日から1週間で壊死脱落します。内痔核で1-2個の場合はゴム輪結紮を行なっています。また、多少の皮垂外痔核を合併していても、当院では皮垂外痔部にメスで切れ込みを入れて、内痔核と一緒にゴム輪結紮する方法も施行しております。
硬化療法に使用する薬剤には、パオスクレー(PAO)とジオンがあります。パオスクレーは止血効果のみで、1度の内痔核に使用します。ジオン注射ALTA: Aluminum Potassium Sulfate Hydrate, Tannic Acid)は四段階注射法という方法で注射を行い、以前は結紮切除術の適応とされた2-3度の脱出を伴う内痔核に対して、つり上げ効果もあります。内痔核が2-3個ある場合や全周性の場合はゴム輪結紮術よりも、ALTAがよいと思います。皮垂外痔核を合併した内痔核に対しても、皮垂外痔核切除にALTAを併用した方法(E・A法)も行なっています。
結紮切除術LEは内痔核だけでなく、皮垂、外痔核、肛門ポリープ合併も、どんな痔核にも対応できる標準手術です。これは痔核の根部動脈を結紮して、内外痔核を楔状に切除して、傷を半閉鎖する方法です。当院では仙骨硬膜外麻酔下での日帰り手術となります。術後の痛みに対しては、内服鎮痛薬の処方ならびに、特製の持続性の鎮痛薬(2%塩酸キニーネ水溶液)を使用することで、痛みを軽減するように努めてます。術後出血の問題に対しては、必ずしも完全な3ヶ所切除のLEに固執せずに、1つの痔核の外痔核部は切除して内痔核部はALTAで処理する方法(E・A法)、ゴム輪結紮で処理する方法や、大きな主痔核はLEで小さな痔核はALTAで処理する方法(LE+ALTA)など併用療法を活用し、術後出血リスクや疼痛を減らすように工夫しています。
(保存的治療、血栓摘出術、ゴム輪結紮術、PAO、ALTA、結紮切除術いずれも当院でできます。ただし、入院での結紮切除術希望の方は他院に紹介になります)


4|血栓性外痔核

外痔核の静脈瘤の中の血液は普通はサラサラしていますが、身体や肛門にストレスがかかったりすると、血液が固まって、血栓化したものです。外痔核ですので、もともと肛門の外にできたものですから、無理に肛門内に押し込まないでください。

(症状)突然に肛門が腫れて、痛くなる病気で、一番頻度が高いのが血栓性外痔核です。
(治療)原則は保存的治療です。ステロイド含有の痔疾用軟膏を1日に2回塗ります。痛みが強い時は鎮痛剤も内服します。上記の痔核の保存的治療と同じです。1-2週間くらいで大分、症状は改善しますが、完全にしこりがなくなるには3-4週くらいはかかるようです。例外的に、血栓が大きく、痛みが強い、血栓が破れて出血しているなどの場合は、患者さんの希望があれば、血栓摘出術をすることもあります。
(当院で治療できます)


5|妊娠中の痔核

妊娠中は痔になることがよくあります。これは妊娠中の増大した子宮による圧迫で静脈うっ血をきたしたり、直腸の圧迫による便秘症、ホルモンの影響などが考えられます。当院は産婦人科と肛門科を標榜していますが、特別な治療ができるわけではありません。

(症状)症状は通常の内外痔核と同じく、肛門の痛み、腫脹、出血などです。裂肛や、血栓性外痔核や嵌頓痔核になることもあります。
(治療)原則は保存的治療です。これは分娩後、ある程度期間が経てば、症状が軽快してくることが多いからです。妊娠中に手術をしても、週数が進むにつれて、再び悪化することもありますし、再び子供を作る予定のある方は次回以降の妊娠時に痔核が再発することもあるからです。保存的治療は痔の軟膏や緩下剤などを使用します。薬の使用に当たっては妊娠中、授乳中は赤ちゃんへの影響のないものを使用する必要があります。ジオン注射は妊婦には使用できません。嵌頓痔核でどうしても我慢できない場合は、妊娠中でも手術することもあるようですが、当院は入院できず、リスクが高いので、行なっていません。
(当院では保存的治療のみできます)


6|裂肛(切れ痔)

肛門上皮が便秘や硬便などの影響で裂けてしまう病気です。女性に多い傾向があります。切れて間もない時期の急性裂肛と、月日がたって潰瘍や狭窄をきたした慢性裂肛に分けられます。裂肛のよくできるところは後ろ(6時方向)と前(12時方向)です。慢性裂肛は潰瘍が深くなり、内肛門括約筋に及ぶと内肛門括約筋の攣縮をきたして、肛門狭窄をきたすことがあります。また、肛門皮垂(見張りいぼ)や肛門ポリープを合併することもあります。慢性裂肛に感染を起こして痔瘻(裂肛随伴性痔瘻)をきたすこともあります。また、痔核の脱出を繰り返して、痔核の付け根が裂けてしまう牽引性裂肛もあります。
以下の治療法についての説明を読んでいただければわかりますが、慢性裂肛という病気は食道アカラシアという病気とよく似ていますね。治療法などそっくりです。上部消化管における食道胃接合部に当たるのが、下部消化管における肛門なのです。裂肛の病態生理の一つは肛門アカラシアと言えます。

[症状]急性裂肛は排便時の出血を認めますが、量は多くありません。知覚のある肛門上皮が切れるので、排便時や排便後も続く痛みを認めます。慢性裂肛になると、痛みに加え、肛門狭窄や排便困難を訴えます。そのため便秘が増悪し、無理に便を出すことで、裂肛がさらに増悪する悪循環に陥ってしまいます。
[治療](保存的治療)急性裂肛は、手術は要りません。痔核と同様の軟膏を肛門に塗布します。原因となっている便秘の治療が重要です。酸化マグネシウムなどの下剤を使用し、食物繊維や水分を多めにとり、便秘を改善すれば、裂肛も改善してきます。
(化学的内肛門括約筋切開法)慢性裂肛が治癒しない原因の一つとして、内肛門括約筋(平滑筋)の緊張が強い人がいます。内肛門括約筋の緊張が強いと肛門後方の血流が悪くなり、裂肛が治りません。そのために、外科的にメスで内肛門括約筋を一部切開して、内肛門括約筋の緊張を低下させる術式がLSIS(側方内肛門括約筋切開術)です。しかし、LSISには切りすぎると便失禁をきたす副作用があります。局所用硝酸塩軟膏、カルシウムチャンネルブロッカー軟膏を肛門に塗布したり、ボツリヌス毒素を内肛門括約筋に注射したりして、内肛門括約筋を薬物で弛緩させる治療法があります。薬物を用いて内肛門括約筋切開と同じ効果を得るので化学的括約筋切開法と呼ばれます。硝酸塩=酸化窒素(NO)ドナー(ニトログリセリン、硝酸イソソルビド)軟膏の肛門塗布による慢性裂肛の治療は、これまでに欧米はもちろん日本でも多数行われ、その有効性は証明され、多くの論文が発表されています。日本大腸肛門病学会の肛門疾患ガイドライン(2014年度版、2020年度版)にも記載されており、医学的に認められているものです。しかし、これだけ世界や日本で有用性が認められた治療法にも関わらず、日本では裂肛に塗布するための硝酸塩軟膏やカルシウムチャンネルブロッカー軟膏が製薬メーカーから製造販売されておらず、保険適応もありません。そのため一部の肛門科専門施設において自家調剤して、患者様の同意の下、細々と利用されているのが現状です。硝酸塩=酸化窒素ドナーとは、ニトログリセリンなどの狭心症の薬です。酸化窒素NOを産生し、NOは血管平滑筋細胞内のcGMPを産生し、カルシウムイオン濃度を減少させ、血管平滑筋を弛緩させます。それと同じ機序で同じ平滑筋である内肛門括約筋平滑筋を弛緩させます。硝酸塩にはニトログリセリンと硝酸イソソルビド(ニトロール)があり、当院ではニトロール軟膏を使用しています。0.37%ニトロール軟膏:軟膏4g(白色ワセリン基剤)中に、硝酸イソソルビド(ニトロール)15mgを含みます。副作用として、頭痛、血圧低下、顔のほてり、めまい、のぼせ、ふらつき、肛門部灼熱感、肛門部皮膚炎などがあり、特に頭痛の副作用が最も多いです。これまでに当院で慢性裂肛の従来法の保存的治療を半年以上続けられて治癒していない患者様で、説明をご理解いただき、同意書にサインいただいた方に無料で処方しています。厚生労働省の認可していない保険適応のない使用法ですので、その点を十分にご理解ください。ニトロール錠自体は狭心症の薬としては承認されています。1回に8g(約12日分)しかお渡しできませんので、その都度通院していただき、経過観察し再診料をいただきます。薬を取りに来られる場合は、予め前日までに電話連絡していただければ準備できます。初診の患者様、従来法の保存的治療を行なっていない患者様には処方できません。
(手術治療)慢性裂肛で肛門狭窄をきたした場合は手術の適応になります。内肛門括約筋の攣縮による肛門狭窄に対して側方内肛門括約筋切開法(LSIS: lateral subcutaneous internal sphincterotomy)が行なわれます。肛門上皮器質化を伴った狭窄の場合は皮膚弁移動術(SSG: sliding skin graft)が行なわれます。当院では日帰り手術として、慢性裂肛に対する振り分け結紮術を主にしています。肛門ポリープや皮垂(見張りいぼ)も同時に切除します。裂肛随伴性痔瘻にはseton手術を行ないます。痔瘻も裂肛も治すことのできる一石二鳥な方法です。牽引性裂肛には痔核の結紮切除術をします。
(急性裂肛の保存的治療はできます。慢性裂肛の手術は振り分け結紮とLSIS、裂肛随伴性痔瘻のseton手術はできますが、SSGはできません。肛門狭窄症に対する肛門ブジーできます。)


7|肛門ポリープ(肥大乳頭)

肛門縁から2cmくらい奥に歯状線と言って、皮膚(肛門上皮)と粘膜の境界線があります。歯状線は山(突出部)と谷(くぼみ)の繰り返しで、山になっているところを肛門乳頭、谷になっているところを肛門陰窩(肛門小窩)と呼びます。肛門乳頭が肥大したものを肥大乳頭と呼び、さらに大きくなりポリープ状になったものを肛門ポリープと呼びます。肛門ポリープは慢性裂肛に合併することがしばしばあります。痔核に合併することもあります。

(症状)小さな肥大乳頭や肛門ポリープは症状は認めません。肛門ポリープが大きくなると、脱出症状を認めることもあります。
(治療)肛門ポリープ(肥大乳頭)は、元々ある肛門乳頭が肥大しただけなので、悪性化することはありません。症状がなければ、放置してかまいません。脱出症状が気になる場合や、他の肛門腫瘍との区別がつかない時は、切除します。局所麻酔で日帰りで切除できます。
(当院で治療できます)


8|肛門皮垂(skin tag)

名前の通り、肛門縁の皮膚の垂み、シワです。痔ではありません。年齢とともに体の色んなところにたるみやシワができてきますね。肛門も毎日の排便で伸縮していれば皮膚の垂みができてきます。女性の場合は前方の膣との間にもよくできます。慢性裂肛に伴うこともあり、その場合は見張りいぼと呼ばれます。また、肛門手術の傷跡は多少の皮垂は残ります。

(症状)肛門を自分で触るとビラビラしているところがあると言って受診する患者様によく見られます。
(治療)肛門皮垂は痔ではありませんし、病気ではありませんので、治療の必要性はありません。気にしないのが一番です。あまりに皮垂が大きくて、ご本人が気になる場合は、希望があれば切除できます。慢性裂肛に伴う場合、痔核に伴う場合は、裂肛や痔核の手術と同時に切除することもあります。
(当院で治療できます)


9|尖圭コンジローマ

ヒトパピローマウイルス(HPV)6型、11型による性行為感染症で、男性の陰茎や陰嚢、女性の外陰部に疣贅(イボ)ができます。肛門にも発生します。肛門性交などがリスクになります。

(症状)肛門管内、外に1-3mm前後の小さな疣贅(イボ)が多数できます。イボだけのことが多いですが、軽度の痛みや痒みを伴うこともあります。まれに巨大尖圭コンジローマといって腫瘍のようなものもあります。
(治療)外科的に疣贅を切除します。肛門管外の尖圭コンジローマは切除せずに、イミキモド(ベセルナクリーム)の塗布で治すこともできます。肛門管内にある場合はイミキモドは塗布できないので、外科的に切除します。性行為感染症なので、パートナーの診察、治療も必要です。
肛門尖圭コンジローマは手術しても、再発することも多く2回3回と切除が必要になったり、切除後の肛門狭窄を来したり、やっかいな病気です。
大事なのは予防です。尖圭コンジローマにも効果のある子宮頸がん予防ワクチン(4価ガーダシルもしくは9価シルガード9)を受けることです。性行為の際はコンドームを使用することです。
(当院で治療できます。対象年齢の女子は堺市の公費による子宮頸がん予防接種[シルガード9]もできます。)


10|肛門癌

肛門は粘膜と皮膚の境界であるため、粘膜由来の肛門腺癌と皮膚由来の肛門扁平上皮癌が発生します。Paget病という癌もあります。痔核と思って、軟膏を塗っていてもよくならず、肛門癌であったということもあります。Paget病は肛門湿疹との鑑別が必要です。

(症状)肛門の腫瘤を認め、徐々に大きくなってきます。出血することもあります。鼠径リンパ節に転移することもあります。大事なことは癌を疑い、生検(組織を採取して細胞の顕微鏡検査)をすることです。
(治療)肛門腺癌は手術(腹会陰式直腸切断術)、肛門扁平上皮癌は化学放射線療法です。もちろん大病院への紹介になります。
(当院で診断・生検はできます。治療はできません)


11|肛門掻痒(そうよう)症

肛門掻痒症とは肛門の痒(かゆ)みをきたす疾患の総称です。原因が明らかな続発性肛門掻痒症として、肛門湿疹、肛門真菌症(カンジダ、白癬菌など)、痔核の脱肛や直腸脱による粘液漏れ、痔瘻の分泌物によるもの、Paget病(癌)、ギョウ虫症(寄生虫)などがあります。明らかな肛門疾患がないにも関わらず、患者さんは痒くて困っていることもしばしばあり、特発性肛門掻痒症(狭義の肛門掻痒症)と言います。

(検査)まず、肛門診察をして、原因となる肛門疾患がないかを確認します。当院では肛門真菌症が疑われる場合は、真菌顕微鏡検査をしています。
(治療)原因となる肛門疾患がある場合はその治療を行います。真菌が確認された場合は、抗真菌薬の塗り薬を使用します。真菌がいない場合は、ステロイド含有軟膏を塗ったりします。続発性でも特発性でも、痒みが強くて我慢できない、夜眠れない場合は、抗ヒスタミン薬や安定剤などの内服を行います。特発性肛門掻痒症は精神的な面もあり、あまりおしりのことを気にしすぎないことも必要です。搔きむしるとかえって肛門を傷つけて症状が悪化します。
温水洗浄便座(ウオッシュレットなど)の使いすぎは、肛門湿疹や肛門掻痒症の原因となります。使用をやめてみるのも一つの治療法です。
(当院では一般的な治療はできますが、治癒困難な場合もあります)


12|直腸肛門痛

裂肛、外痔核、肛門周囲膿瘍・痔瘻、直腸癌肛門癌などの器質的肛門疾患がないにも関わらず、慢性的な肛門痛を認める状態です。痛みが数秒から数分で治る消散性直腸肛門痛と、20分間以上続く慢性直腸肛門痛に分けられ、さらに陰部神経痛、恥骨直腸筋(肛門挙筋)症候群などに分類されます。

(検査)肛門診察をして、原因となる肛門疾患がないかを確認します。大腸ファイバー検査もしておいたほうがよいでしょう。器質的肛門疾患が何もないことを確認して初めて、直腸肛門痛と言えます。
(治療)痔の座薬や軟膏には痛み止め成分(局所麻酔薬)が入っているので、ある程度は効きます。ロキソニンなどの一般的な鎮痛薬も、試してみて効くのであればいいでしょう。抗けいれん薬や「デパス」などの安定剤を使用することもあります。特発性肛門掻痒症と同じく、直腸肛門痛は精神的な要素も強いので、あまりおしりのことを気にしないことも必要です。患者さんは非常に苦しんでいる人もいますが、なかなか治療が難しいです。
(当院では一般的な対症療法はしますが、治癒困難な場合もあります。専門的な検査治療はできません)


13|便失禁(便漏れ)

恥ずかしいので我慢している人が多かったようですが、今は医学的な病気として治療の対象となっています。仙骨神経刺激療法(SNM)が保険適用になった影響もあると思います。日本大腸肛門病学会から「便失禁診療ガイドライン」が発刊されています。これは医師にとっても、患者にとっても非常に良い教科書です。
原因としては、分娩時の会陰裂傷や肛門手術、外傷による肛門括約筋損傷、脊髄損傷などによる神経原性肛門括約筋不全、直腸脱や直腸瘤、過敏性腸症候群など慢性下痢症、高齢者の糞便塞栓による溢流性便失禁などがあります。複合的な原因が多く、若い頃は原因があっても代償されていたものが、高齢者になり加齢による内外肛門括約筋機能低下が加わり、便失禁が発症してくることが多いです。

(症状)固形便失禁、液状便失禁、ガス失禁、パッドの使用、日常生活への影響について、その有無や頻度を質問して、点数をつけて便失禁の重症度を評価します。
(治療)「便失禁ガイドライン」にあるように、詳細な問診や肛門診察である程度の診断がつきます。治療は、SNMのような手術を要する治療は当院ではできませんが、保存的治療で多くの患者様は改善が見込めます。治療としては肛門括約筋体操を行ない、また下痢便・軟便の方は便の性状を固くするため、「ポリカルボフィルカルシウム」や「ロペラミド」の内服を行います。また、サイリウムという食物繊維を摂取するための特定保健用食品「イサゴール」の斡旋もしています。脛骨神経刺激療法もできます。保存的治療で改善しない、専門的検査や、SNMや肛門括約筋形成術などの外科治療が必要な患者様は専門施設に紹介いたします。
(当院ではガイドラインにおける臨床的初期評価、初期保存的治療はできます。専門的検査、専門的保存的療法、外科治療はできません)


14|直腸脱

痔核よりも上(口側)の直腸が脱出してくる病気です。高齢の女性に見られます。痔核の脱肛との鑑別が必要です。生命に関わる病気ではありません。

(症状)排便時や歩行時などに直腸の脱出を認めます。直腸脱による粘液漏れ、便失禁、肛門の痒み、湿疹などをきたします。脱出した粘膜が擦れて出血することもあります。
(治療)治療は外科手術です。経会陰的方法と、経腹的方法(腹腔鏡下直腸固定術)があります。いずれの方法にしても、全身麻酔(経会陰的方法なら腰椎麻酔もありうる)や入院が必要なので、当院で手術はできません。診断して病院に紹介状を書くだけです。
(当院では治療はできません)


15|膿皮症(化膿性汗腺炎)

肛門から少し離れた、臀部のアポクリン汗腺に感染を起こします。若年から中年の男性によくみられます。痔瘻とは症状が似ていますが、できる場所が違います。痔瘻に膿皮症が合併することもあります。

(症状)臀部にいくつもの硬結や発赤、排膿を認めます。両側の臀部にできることもあります。
(治療)皮下膿瘍を形成しているときは、切開排膿をして、抗生剤の内服を行います。おしりを清潔に保つことも大事です。ほとんどはそれで軽快するのですが、広範囲な膿皮症の袋が臀部に広がり、膿皮症を繰り返す場合は根治手術をすることもあります。根治手術をする場合は病院の形成外科に紹介となります。
(当院で初期治療はできます)


16|便秘症(便秘外来)

肛門疾患(痔核、裂肛)を治すには、原因となる便秘症の治療がきわめて大切です。便秘症はありふれた病気ですが、近年新しい便秘薬がいくつも誕生し、2017年に「慢性便秘症診療ガイドライン」が発刊され、従来の日本での慣習的な便秘治療(酸化マグネシウムとセンナ系の乱用)は見直されてきています。
当院では、ガイドラインも参照しながら、使いやすさや費用など患者様の希望もよく聞いて、便秘治療を行っています。

(症状)慢性便秘症診療ガイドラインによると、便秘とは「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」とされています。大きく分けると、器質性便秘症と機能性便秘症に分けられます。便秘が増悪してきた方は、器質性便秘症の除外のために大腸内視鏡検査も受けておいた方がいいでしょう。向精神薬など内服薬も便秘の原因になることがあります。
(治療)水分や食物繊維をしっかりとり、適度な運動をすることですが、それだけでは不十分なので、下剤を内服することになります。大きく分けると、刺激性下剤(大腸の運動を改善する)と浸透圧性下剤(便をやわらかくする)に分けられます。刺激性下剤はセンナやピコスルファート、浸透圧性下剤は酸化マグネシウムが代表的ですが、最近は欧米では第一選択薬であるポリエチレングリコール(モビコール)も使用されるようになりました。便をやわらかくする薬としては上皮機能変容薬のルビプロストン(アミティーザ)、リナクロチド(リンゼス)があります。また胆汁酸トランスポーター阻害薬のエロビキシバット(グーフィス)も便を軟らくする作用と大腸刺激作用の両方を持つ下剤です。下剤は実際に使ってみて、自分にあった下剤や、自己調整して自分の適量を見つけていただくことが必要です。新薬は優れていますが、薬価が少し高いです。患者さんに応じた適切な下剤選択のアドバイスができればと思っております。
また、便塞栓症(糞詰まり)でどうしても出ない方は浣腸や摘便もしますので遠慮なくお越しください。
(当院で治療できます)


17|潰瘍性大腸炎(UC)

潰瘍性大腸炎(UC:ulcerative colitis)は免疫系の異常などが関係した大腸の炎症性腸疾患です。最近、UCの患者は増加している印象があります。基本的にUCやクローン病といった炎症性腸疾患 (IBD)は専門医療機関で診てもらうべきですが、当院でできることは初期診断と軽症UCの寛解維持療法です。

(症状)慢性の下痢、血便、腹痛などが主な症状です。血便で当院を受診した患者様の中には実はUCだったということもあります。肛門鏡での下部直腸粘膜の観察が発見のきっかけになりますし、直腸鏡をすればかなりよくわかります。血液検査、便培養、場合により大腸内視鏡検査等をして、地域の基幹病院へ紹介するようにしています。
(治療)5-ASA製剤の内服が基本です。肛門から注入する局所製剤を使うこともあります。UCやクローン病の治療薬は昨今すごく進歩して選択肢が増えています。大事なことは、寛解導入療法と寛解維持療法に分けて考えることです。中等症・重症UCは診れませんが、基幹病院で寛解導入療法をしていただいた軽症UCの患者様の外来フォロー・寛解維持療法を当院ですることも可能です。
(当院では初期診断と、病診連携の下での軽症UCの寛解維持療法のみ可能です。中等症(重め)、重症、難治性、2nd opinion等は不可です)


18|クローン病(CD)

クローン病(CD:Crohn disease)は潰瘍性大腸炎と同類の免疫系の異常などが関係した消化管の炎症性腸疾患です。患者数はUCの1/3ほどです。10台後半から20台の方に好発し、UCは大腸だけですが、CDは小腸、大腸、肛門、胃や十二指腸といった上部消化管も含む全消化管に非連続性に起こります。また、UCは粘膜だけですが、CDは腸管壁の全層に炎症が起こります。そのため、腸管狭窄や瘻孔など腸管の変形が問題になってきます。UCと同じく、CDは特に専門医療機関で診てもらうべきです。特にCDは小腸を侵しますので、症状がはっきりしないことも多く、CTやMRIや小腸内視鏡など病院でないと十分な検査や診断ができません。

(症状)慢性の下痢、腹痛、体重減少、発熱、痔瘻などが主な症状です。CDの初期症状として、肛門周囲膿瘍や痔瘻で発症することがしばしばあり、痔瘻で当院を受診した方で、普通の痔瘻とは違う特徴的な所見のある方、当院で痔瘻手術をしたが傷の治りが悪いなど、明らかにおかしい方はCDを疑わないといけません。血液検査などをして、地域の基幹病院へ紹介するようにしています。
(治療)治療薬は同じ炎症性腸疾患のUCと共通のものが多いですが、CDは栄養療法といって、エレンタールという栄養剤を飲むことで良くなります。UC同様に寛解導入療法と寛解維持療法に分けて考えます。5-ASA製剤(ペンタサ)の内服や、導入療法のステロイド、維持療法の免疫調整剤などがあります。CDは抗TNFα抗体の注射がよく効きます。最初は栄養療法やペンタサから始めるStep-up療法と、最初から抗TNFα抗体を使用するTop-down療法があり、治療法の決定には、正確な状態の評価や専門医の判断が必要だと思います。
(当院は痔瘻の患者様でクローン病が疑われる方を専門病院へ紹介するだけです。精査や治療はできません。すでにクローン病の診断のついている方の2nd opinion等は不可です)


こんな症状を認めたら、肛門科を受診しましょう。

参考までに、カッコ内に記載したのは可能性のある疾患です。受診して、検査をしないと診断はつきません。

1.肛門が突然腫れて、痛い。(→血栓性外痔核、肛門周囲膿瘍、嵌頓痔核など)
2.肛門の周囲に硬く、腫れたところがあり、そこから膿や血が出てくる。(→痔瘻、膿皮症、粉瘤感染、毛巣洞、クローン痔瘻など)
3.肛門から出血する(肛門出血、下血)。排便時に便器が血で真っ赤になる。便器に血がポタポタ落ちる。トイレットペーパーで拭くと血が付いている。(→痔核、急性裂肛、慢性裂肛、肛門癌、直腸癌、ホワイトヘッド肛門、直腸粘膜脱症候群MPSなど)
4.便に血が混ざっている(下血、血便)。真っ赤な血便は肛門や直腸の出血が多く、大腸からの出血はやや暗赤色になります。(→大腸癌、虚血性大腸炎、潰瘍性大腸炎、大腸憩室症、急性出血性直腸潰瘍など)
5.肛門が痛い。排便の時痛い。排便後も続く痛み。排便と関係なく痛い。(→急性裂肛、慢性裂肛、外痔核、血栓性外痔核、肛門癌、肛門湿疹、直腸肛門痛など)
6.肛門が脱出する(脱肛)。排便時に力んだときや、運動したとき、荷物をもったときなどだけ脱出する。常に脱出している。(→痔核の脱肛、嵌頓痔核、直腸脱、直腸粘膜脱、ホワイトヘッド肛門など)
7.肛門の中からイボ、デキモノが出てくる。(→痔核の脱肛、肛門ポリープ、直腸ポリープ、直腸癌、MPSなど)
8.肛門が痒い(肛門掻痒症、肛門湿疹、肛門真菌症、痔核など)
9.肛門の周囲にブツブツがある。(→尖圭コンジローマ、扁平コンジローマ、多発痔瘻、複雑痔瘻、肛門癌、膿皮症など)
10.肛門にビラビラしたところがある。(→肛門皮垂、尖圭コンジローマなど)
11.便が漏れる、肛門から粘液が漏れる、下着が汚れる。(便失禁)
12.便秘で困っている。(→便秘症、大腸癌、直腸癌など)
13.慢性の下痢で困っている。(→下痢症、過敏性腸症候群、クローン病、大腸癌など)
14.便が細くなった。(→大腸癌、直腸癌、肛門狭窄症、慢性裂肛など)
15.便が出しにくい。排便後も残便感がある。便意がありトイレに行くも、実際は便が出ない。(→内痔核、大腸癌、直腸癌、直腸瘤など)

 診療時間
午前(9:00-12:30)
診察
あり
 
診察
あり


診察
あり
 手術日
外来なし
診察
あり
診察
あり
休診 
午後(17:00-19:00) 診察
あり
 休診 診察
あり
休診  診察
あり
休診 休診
診療時間
午前
9:00-12:30
◯は診察あり


 
手術日
外来なし



休診
午後
17:00-19:00

休診 休診  休診 休診

休診日:木曜、日曜、祝日、年末年始

診察は予約制ではありません。初診の方は午前診は12時まで、夕診は18時30分までにお越しください。出来るだけ、早めの時間にお越しください。受け付け終了間近に来院されると、十分に診察時間が取れないこともあります。
月〜土曜日の9:00-9:30は外来手術が入ることがあるため、手術のある日は9:30頃からの外来診察となりますのでご了承ください。(お知らせ欄に書いてあります)
産婦人科の診療は令和2年8月末をもって終了しました。